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2002年06月28日

●恐怖と向き合う 癒しの物語(11)

ゼミナール当日、私は大きな期待と共に、同じ質量の不安を持ちながらゼミナール会場に向かいました。「問題が解決し、状況が良くなるかもしれない。彼女の病気が良くなるかもしれない」という期待と「でも、もしダメだったらどうしよう・・・」という不安。その狭間を行ったり来たりしました。

ゼミナールに参加するということは、私が持っていた問題に向き合うということでもあります。普段の生活では仕事や用事をすることで忘れることができる不安や恐怖に向き合わなければなりませんでした。
「次の瞬間に、彼女が死んでしまうかもしれない」
ゼミナールが進むにつれ私の不安と恐れはどんどん、どんどん膨れていったのです。

そしてゼミナール最終日、私の不安と恐れがピークに達する出来事が起こりました。ゼミナールの疲れから彼女が倒れたのです。それでも彼女はなんとか会場に戻ってきました。そして、それを見た博士が

「りかちゃん、あなたの時間ですよ」

と言ったのです。そして、セラピーが始まりました。

問題の状況を伝えるよりも、ただ座っていることが精一杯の彼女でしたが、博士は暖かい目で表情で彼女を包み込んでくれました。レクチャーを通して、彼女や私が持っていた誤解や観念などを分かりやすくより具体的に説明して下さいました。
その時は、ただ聞いているのがやっとの私達でしたが、おぼろげながらにも「今まで自分をこんなにも縛っていたのは自分の中の思いこみなんだ」と感じ、それに気づきはじめました。

博士は、彼女の母親、そして彼女の才能についても話して下さいました。一言一言が心に染み入ってきました。乾いた砂漠がどんどん水を吸収するように私達の心も潤っていくのが分かりました。

何より幸せだと感じたのは、愛情を感じれたことだと思います。いつも何処かで、誰かに対して何かに対して「ごめんなさい」という感情しかなかった彼女が初めて「今私生きてる。ほんとうにありがとう」という気持ちになれたといっていました。沢山の本当に沢山の時間を使ってレクチャーをして下さいました。部屋全体の人達の愛情もひしひしと伝わってきていました。

正直言って、レクチャーはあまりにも膨大で全部は覚えていません。でも、それよりも大切な博士や周りの方々の「思い」を、あの慈愛に満ちたエネルギーを私達は一生忘れることはないと思います。こんなにも私達の為に懸命にサポートしてくれている。その姿をみて、そして「変わりたい」という彼女の姿勢を傍で見ていて、私も今まで一人で背負っていたという感覚がなくなっていったのです。

「死んでしまうんじゃないかと思ってずっと怖かった」
思わず突いて出た一言でした。ずっとそう思っていて、それが怖くて心の中に押し込んでいた言葉でした。

そんな私を見て博士はこう言ったのです。

「君たちは命を失うためではなく、命を取り戻すために今日ここに来たんですよ」

そして、その瞬間に彼女は彼女の人生を歩み始めたのです。

彼女が恐れを越えて一歩踏み出したとき、私の中で恐れが弾け飛びました。彼女が一歩ずつ、私のほうに近づいてきたのです。信頼と恐れが一気に噴出しました。

これは親にとって子供が親離れをするときの心境に似ています。子供が親離れをするとき、親はもう子供を守ってあげることはできなくなります。子供は子供で自分の人生に責任を持たねばなりません。いつまでも子供でいる間は、親が生きている限り守ってあげることもできるかもしれない。つまり親が影響力を及ぼすことができるのです。でも、いったん離れてしまうともうそれはできません。

私の場合も同じでした。彼女が私の元で私の言う通りの人生を生きている間は私はある意味安心していられます。でも、彼女が彼女の人生を歩み始めたとき、私は自分のコントロールを手放さねばなりませんでした。そして、彼女の人生を信頼し傍で見守ることしかできません。彼女が背負うリスクを私も背負わねばなりませんでした。

彼女は彼女の命と人生を賭けて歩み出しました。そして私もその賭けに乗ったのです。

最初私は、「私が彼女を救う」つもりでいました。けれど、実際には私が彼女に救われたのです。彼女が前に進む決断をしたと同時に私も前に進むことが出来たのです。そして一人で背負っていた重荷を手放すことが出来たのです。

このゼミナールは4日間のワークショップでした。そしてこの時の経験は私にとって生涯忘れることの出来ない体験となりました。それまで信じていたことがくつがえりました。世界が変わって見えるようになったのです。信じられないような出来事、私達にとっては奇跡が起こったのです。「恐れの世界」から「希望の世界」へ移ったのです。

投稿者 yoshi : 2002年06月28日 00:00

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